北海道レッドデータブック-2001-掲載種等、北海道における昆虫類重要種について
北海道における環境アセスメント等の自然環境調査の際に「着目すべき種」、「重要種」などとして別途取り上げられる昆虫類は、以下の法令やレッドデータブック等に指定もしくは選定されている種を扱っているのが一般的です。
選定基準 |
略称(表中での表記) |
|
1 |
「文化財保護法」に基づく天然記念物 |
天然記念物 |
2 |
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づく国内希少野生動植物種 |
種の保存法 |
3 |
「北海道希少野生生物 北海道レッドデータブック2001」(北海道 2001年3月)の掲載種 |
北海道RDB(2001) |
4 |
「改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物ーレッドデータブックー(昆虫類)(環境省 2006年8月)の掲載種 |
環境省RDB(2006) |
5 |
「日本の絶滅のおそれのある野生生物―レッドデータブック―(無脊椎動物編)」(環境庁1991年8月)の掲載種 |
環境庁RDB(1991) |
6 |
「第2回自然環境保全基礎調査」(環境庁 昭和58年)における調査対象種(指標昆虫類・特定昆虫類) |
第2回自然調査(1983) |
7 |
「自然環境保全調査」(環境庁 昭和51年)における調査対象種(主要野生動物・保全調査種) |
自然環境調査(1976) |
8 |
「環境省報道発表資料 哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物I及び植物IIのレッドリストの見直しについて」(環境省 2007年8月)の掲載種 |
環境省RDL(2007) |
ただし、上記の基準のうち「2」の種の保存法に指定されている昆虫類で北海道に生息している種はいません。
掲載したリストには上記基準に該当するものを全て取り扱いましたが、最近の環境アセスメントなどでは上記の基準のうち「1〜4」までを扱うことが一般的になってきています。
というのも、「5」のレッドデータブックは「4」のレッドリストがこれに置き換わるものであること、「6」や「7」の調査対象種は希少性という観点以外からも種の選定がなされているものがあることなどが、除外される理由といえます。
北海道の昆虫は現在1万種を越える種が記録されていますが、まだまだ記録されていない昆虫が山ほどいますし、記録されているものでも蝶やトンボ、甲虫の一部などを除き、殆ど生態等の知見が無いものが大半です。
ですから、現在重要種として扱われているものの他にも希少な種や注目に値する種はたくさんいます。これらは今後のレッドデータブックの改訂などで追加されていくものと思いますが、北海道の昆虫相の全容が明らかにされるのは一体いつのことなのでしょうねぇ・・・
とりあえず、本ページではあくまで上記選定基準に該当するものを取り扱っています。
【2007年8月発表のレッドリストについて】
2006年8月に2000年に環境省から発表されていた昆虫類レッドリストが正式に「改訂・レッドデータブック」として出版されました。その1年後の2007年8月に早くもレッドリストとして新たなリストが発表され、改訂・レッドデータブックで選定されていた171種から239種と選定種は増加しています。単に選定種が増加しただけではなく、レッドデータブックで選定されていた種が見直され、ランク外になり除外されたものなどもあります。北海道でランク外とされたものとしてはイイジマルリボシヤンマ、マンシュウイトトンボ、ケマダラカミキリなどがあります。逆に新たに追加されたものとしては、外来種の問題などで固有種の存続の危機が大問題となっている小笠原の固有種が一気に増加したようです。北海道に生息するものでも新たに追加された昆虫もあり、ハネビロエゾトンボ、エゾアカネ、チシマミズムシ、リシリノマックレイセアカオサムシ、コハンミョウモドキ、キベリマルクビゴミムシ、オクエゾクロマメゲンゴロウ、マルガタゲンゴロウ、エゾガムシ、ウラギンスジヒョウモン、カラフトヒョウモンなど最近新たに発見された種をはじめとする昆虫類が追加されています。
北海道レッドデータブックにも未掲載であった新たな重要種は下表に示したものですが、見落としがあるかもしれません。
目名 | 科名 | 和名 | 学名 | カテゴリー |
トンボ目 | サナエトンボ科 | ナゴヤサナエ | Stylurus nagoyanus | 準絶滅危惧(NT) |
カメムシ目 | アブラムシ科 | ハシバミヒゲナガアブラムシ | Unisitobion corylicola | 絶滅危惧U類(VU) |
カメムシ目 | ミズムシ科 | チシマミズムシ | Arctocorisa kurilensis | 情報不足(DD) |
コウチュウ目 | オサムシ科 | コハンミョウモドキ | Elaphrus punctatus | 絶滅危惧U類(VU) |
コウチュウ目 | ゲンゴロウ科 | オクエゾクロマメゲンゴロウ | Agabus affinis | 準絶滅危惧(NT) |
コウチュウ目 | ゲンゴロウ科 | マルガタゲンゴロウ | Graphoderus adamsii | 準絶滅危惧(NT) |
コウチュウ目 | ガムシ科 | エゾガムシ | Hydrophilus dauricus | 絶滅危惧U類(VU) |
コウチュウ目 | コガネムシ科 | クロモンマグソコガネ | Aphodius (Aphodaulacus) variabilis | 準絶滅危惧(NT) |
コウチュウ目 | コガネムシ科 | キバネマグソコガネ | Aphodius (Bodilus) languidulus | 準絶滅危惧(NT) |
コウチュウ目 | コガネムシ科 | ヒメキイロマグソコガネ | Aphodius (Liothorax) inouei | 準絶滅危惧(NT) |
コウチュウ目 | コガネムシ科 | ツヤケシマグソコガネ | Aphodius (Nipponaphodius) gotoi | 絶滅危惧U類(VU) |
コウチュウ目 | コガネムシ科 | セマルオオマグソコガネ | Aphodius (Teuchestes) brachysomus | 情報不足(DD) |
コウチュウ目 | コガネムシ科 | アカマダラコガネ | Poecilophilides rusticola | 情報不足(DD) |
コウチュウ目 | カミキリムシ科 | ヨツボシカミキリ | Stenygrinum quadrinotatum | 絶滅危惧U類(VU) |
コウチュウ目 | カミキリムシ科 | アカオニアメイロカミキリ | Obrium cantharinum shimomurai | 情報不足(DD) |
コウチュウ目 | カミキリムシ科 | クロヒラタカミキリ | Ropalopus signaticollis | 準絶滅危惧(NT) |
コウチュウ目 | カミキリムシ科 | コトラカミキリ | Plagionotus pulcher | 準絶滅危惧(NT) |
ハチ目 | ギングチバチ科 | タイセツギングチ | Crossocerus (Crossocerus) varus | 情報不足(DD) |
ハチ目 | ギングチバチ科 | アギトギングチ | Ectemnius (Yanonis) martjanowii | 情報不足(DD) |
ハチ目 | フシダカバチ科 | マエダテツチスガリ | Cerceris pedetes | 情報不足(DD) |
ハエ目 | ニクバエ科 | ゴヘイニクバエ | Sarcophila japonica | 絶滅危惧U類(VU) |
チョウ目 | タテハチョウ科 | ウラギンスジヒョウモン | Argyronome laodice japonica | 準絶滅危惧(NT) |
チョウ目 | タテハチョウ科 | カラフトヒョウモン | Clossiana iphigenia | 準絶滅危惧(NT) |